解説の目的
建築物のシロアリ及び木材腐朽菌による被害の調査、予防または駆除を適正かつ安全に行い、消費者に信頼され、公共の福祉に寄与することを目的としています。
工法等別:発泡施工法
概要
この仕様書では、建築物の床下内の土壌面に泡沫を用いて防蟻(シロアリ防除)処理を行う発泡施工方法について規定しています。
対象とするシロアリの種類
この工法は、特にヤマトシロアリとイエシロアリという2種類のシロアリに対して有効です。
ヤマトシロアリは日本で最も一般的なシロアリの種類です。主に木造建築物の床下や壁内に生息し、木材を食害します。湿度が高い場所を好むため、特に梅雨時に活動が活発になります。小規模なコロニーを形成するため、初期の被害は目立たないことが多いですが、放置すると建物の構造に深刻なダメージを与える可能性があります。
イエシロアリは、主に北米原産で、日本の都市部で見られることが多い種類です。この種は大規模なコロニーを形成し、木材だけでなく、プラスターやプラスチックなども食害することがあります。イエシロアリの被害は非常に深刻で、建物の基礎や構造を脅かすことがあります。
レイビシロアリは、主に地中で生活し、地上の木材にも被害を及ぼします。この種は特に地下の木材や建物の基礎部分に被害を与えることが多く、被害が進行すると建物の安定性を脅かすことがあります。レイビシロアリは、その強力な食害能力と広範囲にわたる被害により、特に危険なシロアリとされています。代表的なのがカンザイシロアリです。
用語の定義
- 発泡施工: 発泡用防蟻薬剤を水と発泡剤で希釈し、発泡装置を用いて発泡させ、床下内に充満させて土壌面に薬剤を浸透させる方法。
- 発泡用防蟻薬剤: 発泡剤の添加により、所定の発泡倍率で発泡する防蟻効果のある薬剤。
- 発泡剤: 発泡用防蟻薬剤に添加して、薬液を発泡させる薬剤。
- 指定濃度: 発泡作業液中の有効成分の濃度を、薬剤の処理方法や有効性を考慮して定める。
- 発泡作業液: 発泡を目的として、発泡用防蟻薬剤を希釈し、発泡剤を添加して混合したもの。
- 発泡倍率: 発泡作業液が発泡し、容積が増大した時の増大倍率。
- 消泡時間: 発泡した作業液が元の液体に戻るまでの時間。
- 発泡装置: 発泡ヘッド、送液ポンプ、薬液タンクなどを含む装置。
- 発泡ヘッド: 発泡作業液を発泡させ、発泡体を移動させる機器。
薬剤
- 主剤: この仕様書で使用される主剤は、協会認定のものでなければならない。
- 発泡剤: 指定濃度に希釈した主剤に添加し、所定の発泡倍率を得て、消泡時間が2時間以上確保できる品質のものを使用する。
機器
- この仕様書で使用される機器は、製造メーカーが定める「施工マニュアル」に従う。
皮膜形成処理を行う者
- 処理を行う者は、製造メーカーが定める講習会を受講した者である必要があります。
土壌表面皮膜形成処理の流れ
発泡施工の解説
1. 事前調査及び施工計画
事前調査
- 建築物周囲の状況: 敷地内の環境や周辺の状況を調査。
- 建築物の構造: 構造種別と構造方式の特定。
- 1階の間取り: 住宅の平面図の確認。
- 床高: 床の高さの測定。
- 布基礎の配置と換気口: 基礎の配置や換気口の位置とサイズ。
- 床下の状況: 防湿措置、立ち上がり管、木片の有無、排水孔や井戸の存在を確認。
施工計画
- 発泡ヘッドの設置: 発泡ヘッドの設置位置と数の決定。
- 薬液の漏洩防止: 薬液が漏れる可能性のある箇所の特定と対策。
- 施工完了の確認: 床穿孔箇所の計画。
- 作業液容量: 必要な作業液の量の計算。
- 発泡体の流入状況: 発泡体の流れを確認するための箇所の特定。
2. 防除処理の順序
- 木材処理の先行: 土壌処理に先立ち、木材処理を行う。処理は標準仕様書に準ずる。
3. 施工開始前の作業と養生
- 床下の清掃: 木片類の除去と土壌面の平滑化。
- 床上への薬液浸入防止: 適切な措置を講じる。
- 排水孔の封鎖: 床下にある排水孔を封鎖する。
- 発泡ヘッド取り付け: 開床作業を行い、発泡ヘッドを取り付ける。
- 薬液流入口の設置: 布基礎を区画するための薬液流入口を設置。
- 材料の養生: 薬液に対する保護が必要な材料を保護する。
4. 準備作業
発泡ヘッドの設置と有効範囲
- 発泡ヘッドは床面に設置し、障害物がないことを確認する。
- 床下処理面積50m2につき、少なくとも1ヵ所に発泡ヘッドを設置する。
- 発泡ヘッドは垂直に設置し、床下地面より40cm以上の高さにする。
- 換気口を通じて発泡体を流入させる場合、半径5m以内を有効範囲とする。
- 布基礎換気口閉塞板の準備を行う。
作業液の調合
- 主剤は防蟻薬剤を含む乳剤を使用。
- 発泡剤は起泡性を持つ界面活性剤。
- 調合は製造メーカーの「施工マニュアル」に従う。
5. 発泡施工
発泡作業液の使用量
- 土壌表面1m2当たり3.3L以上、薬剤原体換算で30g以上を使用。
発泡作業液の発泡倍率
- 使用量を満たすように発泡倍率を調整する。
6. 発泡処理後の確認と作業
充損状況と充填完了の確認
- 発泡ヘッドの近くの換気口から泡の流入状況を確認。
- 換気口がない場合は、布基礎天端と土台との間隙からの流出で確認。
- 充填完了は、床下の状況を考慮して、遠い箇所で確認する。
消泡時間の確認
- 発泡体が床下全体に充満した後、半分に減少するまでの消泡時間を2時間以上とする。
換気口閉塞板の除去
- 発泡体の充填完了後30分以上経過したら、換気口閉塞板を取り除く。
発泡施工に関する注意事項
処理にあたっての注意事項
- 床下に水が溜まっている場合は施工しない。
- 床下収納庫や居住室内に薬液が浸入しないようにする。
- 床下の配管や材料を保護する。
- 床下や周辺の排水管に薬液が浸入しないようにする。
施工の時期と方法
- 床下の土壌が露出している時は床板張り後に施工可能。
- 防湿シートやコンクリートたたきの場合は、標準仕様書による土壌処理方法を用いる。
安全対策
- 安全対策は、協会の「安全管理基準」と製造メーカーの「施工マニュアル」に基づいて行う。
監修者コンテンツの監修をした人
クロモリ ユウキ
air Inc.代表。マーケティング会社を経営しています。地方企業を支援しています。市場調査のガイドラインを監修。
シロアリ博士
シロアリ防除施工士。シロアリ会社に勤務しながらシロアリの生態の情報発信をしています。シロアリに関する情報を監修。
岳下斉弘
株式会社サクセス代表。建築設計会社を経営する設計士。リノベーション協議会会員。住宅に関する情報の監修。